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最高裁判所第三小法廷 平成2年(行ツ)5号 判決 1991年3月19日

静岡県浜名郡舞阪町舞阪三七三四番地の二

上告人

杉本正博

浜松市中田島町九五三番地の四

上告人

杉本忠博

右両名訴訟代理人弁護士

三井義廣

静岡県浜松市元目町一二〇番地の一

被上告人

浜松西税務署長 鈴木鹿太郎

砂山町二一六番地の六

被上告人

浜松東税務署長 倉田外茂男

右両名指定代理人

下田隆夫

右当事者間の東京高等裁判所平成二年(行コ)第二七号贈与税決定処分取消請求事件について、同裁判所が平成二年九月二七日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人三井義廣の上告理由一、同三について

所論は、違憲の主張を含め、原審の判断と関係のない事項を挙げて原判決の不当をいうものにすぎない。諭旨は、採用することができない。

同二について

所論は、原判決の結論に影響のない説示部分を論難するものにすぎない。諭旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)

(平成三年行ツ第五号 上告人 杉本正博 外一名)

上告代理人三井義廣の上告理由

一、上告人が、控訴審における平成二年六月一四日付け準備書面において主張したとおり、本件贈与と同じ年の昭和五七年四月二五日に本件自動車教習所の校長であって従業員である訴外坂田輝雄が廣瀬恭寛から出資持分一〇〇口の贈与を受けている。これについて昭和五八年に被上告人から税務調査を受けた際、その贈与の存在が明らかになったにもかかわらず、訴外坂田輝雄に対しては何ら贈与税の課税は行われていない。同じ会社の、同じ年における出資持分の贈与について、一方は課税され他方は課税されないとの処分は是認されるべきものではなく、これを看過ごして本件処分を適法なものと認定した原判決は、憲法第一四条一項の平等原則に違反し、また国税通則法第一条に規定する税務行政の公正な運営を図るとの目的にも違背する不当なものといわざるを得ない。

また、原判決は、この点について何らの判断もしておらず、理由不備の違法がある。

二、本件会社の出資持分の保有割合について、第一審判決は「五六事業年度は九五パーセントを右三名(廣瀬福子・同恭寛・同孝之)が保有(所有)していた」と認定し(七枚目表三行目)、原判決(第二審判決)はこの部分を引用しているものであるが、他方、原判決では「昭和五六年末から昭和五七年にかけて、本件会社従業員であった控訴人ら同族以外の者が合計五パーセントに当たる出資の贈与を受けた。もっともこの贈与にもかかわらず、廣瀬ら同族は、依然として出資持分の九五パーセントを有しており」と認定している(六枚目一行目以下)。この両者の認定は明らかに異なる事実を認定したものであり、矛盾するものである。

確かに、五六事業年度中に上告人ら同族以外の者に贈与された出資持分は二五〇口二五万円相当であり、全出資持分の五パーセントにあたるもので、第一審判決の認定は正当である。しかし、その翌年である昭和五七年には、本件贈与を含め三五口三五万円相当の出資持分が新たに贈与され、その結果上告人ら同族以外の者が保有する出資持分は全体の一二パーセントを占めるに至っているのであって、原判決はこの点を看過ごしている。

三、さらに、上告人は原審における前記準備書面において、裁決例と異なる第一審判決の不当性を主張したのであるが、この点について原判決はなんらの判断もしていない。

即ち、昭和五六年四月二七日付け裁決は、同族株主のみの出資者構成が従業員株主という他人資本の参加の一事をもって、それまでの配当率が将来も継続できる配当率ではないと認定しているのであり、原判決もこの裁決例とは異なる理由・結論を示しているのであるから、上告人の右主張に対して判断すべきであるところ、これについて全く理由が示されていない。したがって、原判決には理由不備の違法があるものといえる。

四、以上の理由から、原判決は破棄を免れない。

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